ネットワークやサーバの設計・構築をおこなうエンジニアであり、チャットワークユーザーの永野英二さん。彼と名刺交換をして驚きました。メールアドレスが載っておらず、代わりにチャットワークIDが記載されているのです。なぜ永野さんは名刺からメールアドレスを削除したのか。
今回はメールを使わなくなった背景と永野さんのビジネス哲学を紹介します。
名刺からメールアドレスを削除した理由
Q. 永野さんのお仕事について教えてください。
永野:国内外問わず、リモートでネットワークやサーバの設計、構築をおこなっています。また、小規模事業主の方のWebサイトに対して目的に沿った運用アドバイスをおこなうほか、WebやITに関わる方に役立つセミナーイベント「!important」の主宰をしています。
Q. チャットワークを使おうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。
永野:きっかけはクラウド型webサイト制作サービス「Jimdo」の事業会社であるKDDIウェブコミュニケーション様とお仕事をしていたとき、やり取りのためのツールとしてチャットワークを指定されたことでした。その後、これは使えるぞと思って、今はクライアントとのやり取りはチャットワークに統一しています。
Q. 永野さんは名刺に電話番号とメールアドレスを載せていないのですね。代わりにチャットワークIDが入っています。
永野:そうなんですよ。もうメールの時代じゃないなと思って、半年ほど前に名刺をリニューアルしたときに外しました。
4、5年前まではプライベートでもまだメールが主流でしたが、今はもうSNSがメインのコミュニケーションツールになっていますよね。仕事で知り合った人でも、SNSでつながってメッセンジャーで連絡をとるのが当たり前になっています。特にフリーランスの人は何かしらのチャットツールを使う人が増えています。
SNSかチャットワーク。私が仕事で付き合う方のほとんどは、いずれかはやっていますからね。
ちなみにLINEも多くの方が使っているツールですが、ビジネスで使うべきではないと考えているので載せていません。私がそもそも使っていないということもありますが。
(参考)チャットワークのプロフィールをHPや名刺に載せる方法
ストック型とフロー型の情報を切り分けたかった
Q. なるほど。メールアドレスについては“使わないにしてもとりあえず載せておこう”という選択肢はなかったのでしょうか。
永野:メールアドレスが載っていると、今までの感覚からメールで連絡してしまう方が多いですからね。載せてなければ絶対にメールは来ませんから(笑)。
Q. たしかに(笑)。完全にメールの使用をやめたのですか。
永野:いえ、そういうわけではありません。インフラ系などの業界ですと、どうしても会社的にメールしか使えないという場合もあります。それは仕方ありません。また、私自身もストック型のツールとしてはいまだにメールを使います。ネットワークやサーバを扱うので、そちらの障害情報などがメールで届くのです。
そういったストック型の情報と、挨拶やちょっとしたやり取りなどのフロー型の情報を混ぜたくないのです。海外とも仕事をしているのですが、ログ情報や障害情報などが届くように設定しているので1日に1,000通くらい来ます。その中にフロー型の情報が混ざるとうっかり見逃すこともありえます。かといって、そのためにわざわざ別ドメインでメールアドレスを取得するのも本末転倒です。
それよりも、ストック型とフロー型でそれぞれ適切なツールを使うべきです。ストック型はメール、フロー型のやり取りはチャットワークに集約するのがベストですね。
Q. なるほど。ではその中でも特にチャットワークを選んだ理由はなんだったのでしょうか。
永野:まず「既読」がつかないことです。その理由は私の働き方にあります。独立した当初、連絡はFacebookメッセンジャーを使うことが多かったのですが、メッセンジャーだと既読がわかるんですね。それもあって、とにかく来たメッセージはすぐに返信していましたし、昼も夜も関係ない生活を送っていました。
無理がたたって体調を崩しかけまして、さらに子どもも大きくなってきたこともあり、働き方を見直すべきと考えたのです。
そこで決めたルールが、「午前中に来た連絡は当日の営業時間内に返す、午後に来た連絡は翌日に返す」というものです。このルールをクライアントにもお願いして、納得していただきました。
このルールのもとでは、既読がつく、つまり連絡を確認したかどうか相手に伝わらない方が何かと楽です。そういった事情から、「既読がつかない」ことは連絡用のツールに求める最大の条件でした。
Q. たしかに読んだことがわかったら、「返してほしい」と思ってしまいそうですよね。
永野:ええ。でも、それは相手もそうなんですよね。既読がつかないことでお互いの気持ちが楽になれるのです。
Q. 他にもチャットワークを選んだ理由はありますか。
永野:インターフェースがわかりやすく、ITリテラシーが低い方でも使えるのも魅力的でした。ダイレクトチャットやグループチャットのアイコンが縦に並んでいて、クリックするとチャットが開くというインターフェースは日本人向きだと思います。海外のチャットツールはあまり日本人になじまないし、難易度も高いですね。
クライアントの中には小さな飲食店のオーナーさんなども多くて、そういった方はITに詳しくありません。スマートフォンにFacebookは入っているけど、使ってはいない。Twitterも入っているけど見る専門。そんな方がほとんどなんです。そういった方でもチャットワークは使えますし、逆に私としか使わないので、「Webに関するホットライン」として認識いただいています。
Q. 他の方が登録されていないということは、赤バッジがついていたらそれは自動的に「Webサイトについて永野さんから何か連絡が来ている」ということになるわけですね。たしかにそれくらいシンプルだとITリテラシーに関係なく使えそうです。
永野:エモーティコンが使えるのもいいですよね。フランクな雰囲気で使えますし、一方でメールのようにフォーマルな雰囲気を出してもいい。メッセンジャーとメールのちょうど中間で、よいとこどりのツールだと思います。
Q. たしかにメールだとあまり砕けた雰囲気になりませんよね。
永野:海外だと「Hi! Eiji. How are you!?」みたいな軽いノリでくるんですけど、日本だと必ず「◯◯様」から始めて、自分も名乗って、「お世話になっております」ですからね。日本人は名乗りを上げる文化なのかもしれませんね。戦国時代の合戦からそうですよね(笑)。
チャットワーク導入でプロジェクトの進行速度も向上
Q. チャットワーク導入の効果は感じていますか。
永野:感じますね。先ほども言ったように「◯◯様」や「お世話になっております」などの不要な文言が減り、その分送りやすくなるのでコミュニケーション量はぐっと増えました。そのおかげでレスポンスが早くなり、プロジェクトの進行速度も上がりましたね。
Q. これからチャットワーク導入を検討している方へアドバイスをいただけますか。
永野:ツールは何でもいいんですよ。まず目的があって、それに応じたツールを選べばいいんです。私の場合はそれがチャットワークだったということです。
試しにメールを全部チャットワークに置き換えてみるといいと思いますね。それでコミュニケーションが活性化するなら、チャットワークがよいということです。メールほど堅くならずに利用できますから、まずはプロジェクト単位などのやり取りから始めてみては。
−−ありがとうございました!
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永野英二
福岡を拠点にネットワークやサーバの設計・構築をおこなうエンジニア。営業マンから独学でエンジニアへ転身する。会社員時代は新事業の立ち上げと働き方改革を担当し業務改善を成し遂げるなど、ユニークな経歴をもつ人物。
著書(共著)
いちばんやさしいJimdoの教本 人気講師が教える本格ホームページの作り方
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