2018年11月26日月曜日

ChatWorkイベントレポート:ケーススタディから学ぶ働き方改革カンファレンス」にChatWorkが登壇しました【後編】

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9月19日、働き方改革に関するイベント「ケーススタディから学ぶ働き方改革カンファレンス」が開催され、ChatWorkからは働き方経営研究所 所長の田口 光が登壇しました。

本記事では後編として、「組織の生産性向上で会社を変える」と題した特別セッション、およびアトラエ代表取締役 新居 佳英氏による基調講演の模様をレポートします。


特別セッション「組織の生産性向上で会社を変える」




特別セッション「組織の生産性向上で会社を変える」に登壇したのは、ヒューマンキャピタルテクノロジー取締役 渡邊 大介氏とINTLOOP代表取締役 林 博文氏。モデレーターは千葉商科大学国際教養学部 専任講師で働き方評論家の常見 陽平氏が務めました。

現在の日本は採用意欲のある会社が98%もあるのに対し、2018年から2023年にかけて一気に人が減っていくという歪な状況になっており、常見氏はこれを「採用氷河期」という言葉で表現します。

売り手市場では働き方が改善できない企業は選ばれず、採用のためにも働き方改革に取り組まなければいません。

また、働き方改革は従業員個人の生産性を上げることにもつながるわけですが、具体的にはどうすればいいのか。

よく言われる施策は「残業を減らす」ことですが、実際には残業を減らしても管理職が疲弊するだけでうまくいっていない企業が多いといいます。

ではどのように組織のパフォーマンスを上げていくべきなのでしょうか。

リクルートとサイバーエージェントが共同で創業したヒューマンキャピタルテクノロジーの渡邉氏は、サイバーエージェントが10年で売上生産性を2倍にした実績を紹介し、その理由として「能力発揮度が高い」ことを挙げます。

この能力発揮度を高くするために、サイバーエージェントは「従業員の声を経営に生かす」という方針をとっており、ヒューマンキャピタルテクノロジーの「Geppo(ゲッポウ)」を採用。経営に対して声を上げれば届くという実感、つまり「打てば響く体験の設計と運用」を実現しているのだといいます。

一方、INTLOOP代表取締役 林 博文氏は働き方改革について「ルールである程度改善できる」「成果主義にこだわる」という2点を重要なポイントとして挙げます。

具体的にはまず、「無駄な作業をなくす」こと。社内報告や稟議、調整に奔走している会社が多く、そういった無駄が生産性を阻害しているのだとか。

また、人材を最適配置することも重要であり、作業によっては外部のプロフェッショナルに任せることも必要だといいます。

「マネージャーでも役員でも、できないものはできないのです。たとえばデジタルマーケティングなどは若いからという理由で若手社員に任せてもなかなか難しい。教育するにもコストがかかります。プロに任せるところは任せることで、自社のコア・コンピタンスを見極めるべきです」

こうした両社の取り組みに耳を傾けた常見氏は、最後に「日本の最大の宝は人材。そこを解き放つためのマネジメントができるかどうかが日本の働き方改革のカギを握る」と述べてセッションを締めくくりました。


アトラエ代表取締役 新居 佳英氏「成長企業が取り組むエンゲージメント経営とは?」




イベントの最後に登壇したのは、アトラエ代表取締役 新居 佳英氏です。

インテリジェンスなどを経て2003年にHRテクノロジー分野で創業した新居氏が注目するのは「エンゲージメント経営」。

その背景には、現在の日本の深刻な状況があります。

「調査によると、仕事への熱意度で日本は139ヶ国中132位。先進国生産性と1人あたりのGDPは最下位です。かつて世界の時価総額ランキングトップ50社のうち32社が日本企業だった時代もありましたが、現在はわずか1社のみです」

こうした状況を新居氏は「失われた30年」と呼び、その理由として組織や働き方の停滞を挙げます。

平成元年の日本はピラミッド型多重下請構造であり、製造業が元気で労働集約的な働き方をしていました。その状況ではオペレーションの効率化こそが競争力の源泉だったと新居氏はいいます。

他方、平成30年の現在。情報通信業が台頭し、知識労働にシフトした結果、創造性と革新性の発揮が求められる時代となりました。

この変化についていけなかったことが、日本が生産性を落とした最大の原因だと新居氏は見ているそうです。

「インターネットによってビジネスの構造が変わってきたなら、組織も変わらなければなりません」

注目されているのは、よりフラットな関係性で築かれた「ホラクラシー」と呼ばれる型の組織です。もちろん、すべての業種に最適というわけではありませんが、変化が早くクリエイティブな業務が多い組織はホラクラシーが適しているのだと新居氏は言います。

ホラクラシー組織が目指すのは、社員のエンゲージメントが高い状態を作ることです。

エンゲージメントとは組織や仕事に対する自発的な貢献意欲のこと。モチベーションや従業員満足度といった指標と似ていますが、エンゲージメントの方が組織の業績向上や創造性向上と因果関係があることがわかっているのだとか。また、スポーツの世界でも着目されており、強いチームほどエンゲージメントが高いことがわかっているそうです。

興味深いのは、経営陣に近いほどエンゲージメントが高く、一般社員ほど低いと思われがちですが、実際にはそうでもないということ。

「課長、部長クラスのエンゲージメントが低く、一般社員が高いというケースも多々あります」

そういった点から、経営陣と管理職のコミュニケーションが不足していたり、信頼関係の構築が急務であるといった課題が見えてきたりするのだといいます。

さらに、月1という早いペースでエンゲージメントを確認することで、離職の防止にもつながるのだとか。

「たとえば新卒社員はゴールデンウィークにエンゲージメントが下がり、10月くらいにもう一度下がることがわかっています。そのタイミングでフォローアップすることで、定着率を上げることができるのです」

エンゲージメントはチームによっても異なります。その場合、エンゲージメントの高いチームのやり方を他のチームにも伝えていくことで、属人的になりがちなマネジメントの均質化を図る効果もあるといいます。

アトラエも当然、エンゲージメントを重視したホラクラシー組織となっており、ルールよりも倫理観を大事にした組織づくりや、出世・肩書を完全撤廃した360度評価の人事制度、全社員による自社株の保有など、これまでの常識にとらわれない取り組みを実践しています。

その結果、離職率は非常に低く、優秀な人材の確保につながっているといいます。

今後、会社規模が拡大するとそういった取り組みは難しくなるのではと言われることもあるといいますが、新居氏は「むしろヒエラルキー組織のほうが人数が増えたときの弊害が大きく、フラットなホラクラシー組織のほうがアメーバ的に社員を増やすことが可能」と自信をのぞかせました。

新居氏は最後に、「会社組織は関わる人が幸せになるためにつくられたもので、働く人が一番大事。エンゲージメントが高まることで、日本は成長していくチャンスが十分にあります」と将来への期待を語りました。

働き手が減少を続ける日本では将来に向けた生産性向上が不可欠。ChatWorkは今後も働き方改革を支援していきます。
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